新島・建築・コーガ石に関する言葉について、簡単に解説をします。
あ
- あいじゃくり(相决り)
- 部材を接合する方法の一つ。接合する部分の厚さをそれぞれ半分まで切り欠き、切り欠いた部分を接合することで重なっていない部分と同じ厚さに仕上げる方法。
- あらと
- 家に上がってすぐのところにある部屋。
- いんきょ(隠居)
- ある家で代替わりする際、親は同じ敷地内に主屋と別に家を建ててそこに移り住み、子に主屋を譲った。このとき、親が移り住んだ家をインキョと呼んだ。
- ゔぉーると(ヴォールト)
- 半円、あるいはアーチが水平方向に連続した形状。
- おおむね(大棟)
- 屋根の頂部に水平にできる棟。
- おーや
- 新島で主屋のことをこのように言う。
- おがみ(拝み)
- 勾配のついた材を頂部で合わせること。また、合わせた部分。その形が手を合わせ拝んでいるように見えることからこう呼ぶ。
- おがみともえがわら(拝巴瓦)
- 破風の最上部である拝み部分につける瓦で、端部が丸く作られているもの。
- おにいた(鬼板)
- 大棟や降り棟の端部につける装飾性のある板状の瓦。粘土以外に石や木でも作られる。
か
- かげもり(影盛)
- 鬼瓦の後ろに見られる高まり部分。もともとは鬼瓦とは別に漆喰や瓦を塗りこめていたもの。
- かざんがん(火山岩)
- 火成岩のうち、急激に冷やされてできたもの。
- かせいがん(火成岩)
- 溶岩が冷えて固まることでできた岩石。急激に冷やされてできたものを火山岩、ゆっくり冷やされてできたものを深成岩と呼ぶ。
- かって(勝手)
- 流しや竈などを設けた調理部門。
- かぶいし(かぶ石)
- 抗火石のこと。良質のものは水に浮いたため「(水に)浮かぶ石」からこのように呼ばれた。
- かまやかた(釜屋形・竈屋形)
- 風呂や竈など、火を使う建物を主屋とは別にして建てたもの。
- がり(ガリ)
- コーガ石を削る道具。基本的には石工職人が自分の使いやすい形や大きさに作る。
- くさや
- 保存食の一つ。トビウオやムロアジなどの魚を、海水をもとに作られた「くさや汁」と呼ばれる乳酸菌醗酵した液体に漬けた後、干物にしたもの。独特の香りがあるため、多くは真空パックや瓶詰の状態で販売されている。
- くだりむね(降り棟)
- 屋根の流れに沿って軒に向かう棟。寄棟屋根・入母屋屋根の隅につくもの以外は稜線にならない。
- くろうんもりゅうもんがん(黒雲母流紋岩)
- 黒雲母を含んだ流紋岩。
- げぎょ(懸魚)
- 破風板の下にある、棟木や桁の木口を隠す飾り板。もともとは火伏のために魚の形に彫られたものと考えられている。懸魚がつけられている場所によって、拝み部分につけられているものを拝懸魚、勾配部分に沿ってつけられているものを降り懸魚という。また、形状によっても蕪懸魚、猪目懸魚、梅鉢懸魚などとさまざまに呼び分けられる。
- けたゆき(桁行)
- 建物の棟と平行な方向。また、この方向の長さ。
- けん(間)
- 尺貫法における長さの単位の一つ。もともとは柱間を表す言葉で、長さの単位ではなかった。柱間の長さは時代や場所によって異なったが、のちに1間を6尺と定めたため、1間は約1.818メートルとなった。
- こーがせき(抗火石・コーガ石)
- 向山火山の噴火により作られた、溶岩による多孔質の火成岩。学術名は黒雲母流紋岩。明治時代には剛化石の表記も見られた。1913(大正2)年、東京帝国大学工学部の渡邊渡博士が『日本鑛業會誌』上で発表した「建築用新石材に就て」という論文の中で、コーガ石が「抗火石」の表記で紹介された。
- こーにす(コーニス)
- 壁の上部につく水平な帯状の装飾。
さ
- じかやま(自家山)
- 自家使用のためのコーガ石を採掘する山。
- しきねじま(式根島)
- しっかいちょうさ(悉皆調査)
- ある地域や範囲の中にある調査対象の建物すべてに対して調査を行うこと。悉は「ことごとく」、皆は「みな」でひとつ残らずすべて、という意味。
- しど
- 新島で背戸のこと。
- しゃく(尺)
- 尺貫法における長さの単位の一つ。尺には建築などで広く使われる曲尺と呼ばれるものと、和裁で使われる鯨尺の2通りがある。曲尺の1尺は約0.3030メートル。鯨尺の1尺は曲尺の1尺2寸5分で、約0.3788メートル
- しゃっかんほう(尺貫法)
- 長さや重さを表す単位系の一つ。長さは「尺」を、重さは「貫」を基本とする。日本建築は尺貫法を基に設計されているため、長さの「尺」や「間」、面積の「坪」を使って考えることが多い。なお、現在では尺貫法を取引や証明に使用することはできない。
- しゅおく(主屋)
- 敷地内における中心となる建物。当代の主人やその家族が住む。
- しろく(四六)
- 新島で一般的に見られる民家の規模のこと。梁行4間(約7.28メートル)、桁行6間(約10.92メートル)であることからこのように呼ばれたという。
- しんせいがん(深成岩)
- 火成岩のうち、ゆっくりと冷やされてできたもの。
- すはま(洲浜・州浜)
- 祝儀の飾り物である洲浜台の形をかたどった紋。
- すん(寸)
- 尺貫法における長さの単位の一つ。1寸は0.1尺で、約0.0303メートル。
- せど(背戸)
- 家の後ろの方。家の裏。
- そせきぞう(組積造)
- 石やコンクリートブロックなどの材を積み上げて組んでいく工法のこと。建材を積み上げて作った壁で建物全体を支えるため、建物の内部空間を広くとることができる。一方、窓や扉といった開口部を広くとる場合は、壁で支える力が弱くなるため補強が必要になる。
た
- たけしばきゃくせんたーみなる(竹芝客船ターミナル)
- 伊豆諸島・小笠原諸島への玄関口として使用される東京港旅客ターミナルの一つ。
- たけしばさんばし(竹芝桟橋)
- 竹芝客船ターミナルのこと。最寄りのバス停や一部の案内板で竹芝桟橋と表示されている。
- たちもの(立物)
- 棟の端部に使われる部材で、立ち上がっている形状のもの。
- ちゃのま(茶の間)
- 家の中で家族が食事をとる部屋。
- ちょうでい
- 家の奥にある部屋。納戸や寝室などに使われる。
- つぼ(坪)
- 尺貫法における広さの単位の一つ。1坪は6尺四方、約3.305785平方メートルで1歩に等しい。主に家屋や宅地の面積に対して使用する。一般的には畳2枚分の広さに相当する。
- でい(出居)
- 座敷。客間。
- とぐち(戸口)
- 家の出入り口。
- ともずり(共摺り)
- 石壁のように石同士を重ねる際に、接着面の馴染みを良くするために互いに摺り合わせること。
な
- にいじま(新島)
- 伊豆諸島の一つ。東京から約150キロメートル南に位置する。面積は23.87平方キロメートル。式根島とともに、全域が東京都新島村に属する。
- にいじまがらす(新島ガラス)
- コーガ石を原料として作られるガラス。コーガ石に含まれる鉄分などからオリーブ色を帯びたガラスになる。
- にいじまむら(新島村)
- 東京都の島嶼部にある村。有人島の新島と式根島、無人島の鵜渡根島・地内島・早島から構成されている。人口は約2,600人。1992(平成4)年に新島本村から改称した。村内には本村・若郷・式根島の3つの地名がある。
- にさんかけいそ(二酸化珪素)
- 珪素の酸化物。化学式はSiO2。天然には水晶や石英などの形で存在する。珪酸とも呼ばれる。
- にしき
- 新島村営の連絡船。新島と式根島を約15分で結び、1日3往復している。
- にしんかぜ(西ん風)
- 西から吹く風。西の風。新島では冬場に吹くものが特に強く、大火事を引き起こすこともあった。
- ねきり(根切り)
- 建物の基礎を埋めるために地面を掘ること。また、掘ったところ。
は
- はしらま(柱間)
- 神社や仏閣など、伝統的な日本建築における柱と柱の間。その長さは地域や時代によって異なり、また同じ建物の中でも梁行に使われるか、桁行に使われるかでも異なることがあった。この長さが後に尺貫法の1間の基になった。
- はずれいし(外れ石)
- 規格外の石や、裁断後の不要な石のこと。
- はふ(破風)
- 切妻屋根や入母屋屋根の両端に見られる三角形の部分。また、そこに取り付けられた板や、周辺に取り付けられた付属物を含むこともある。切妻破風・入母屋破風・千鳥破風・唐破風などの種類がある。
- ぱらぺっと(パラペット)
- 建物の屋上やバルコニーの外周部分につけられた、低い手すりのような立ち上がり部分。
- はりゆき(梁行)
- 建物の棟と直交する方向。また、この方向の長さ。梁間ともいう。
- ひぶせ(火伏)
- 火災を神仏の霊力や信仰などによって防ぐこと。
- ひれ(鰭)
- 日本建築で懸魚や鬼瓦などの左右につけた彫刻。
- ぶ(分)
- 尺貫法における長さの単位の一つ。1分は0.1寸で、約0.003030メートル。
- ぶ(歩)
- 尺貫法における長さの単位の一つ。1歩は6尺四方、約3.305785平方メートルで1坪に等しい。主に山林や農地の面積に対して使用する。
- ぼうか(防火)
- 火災を火気の管理や建物の構造・設備などによって防ぐこと。
- ぼがん(母岩)
- 採掘された状態の石。あるいは製品を作り出す前の状態の石。
- ほんそん(本村)
- 新島村の地名の一つ。新島の中央部に広がる低地部を中心とした地域で、面積は18.53平方キロメートル。人口は約1,800人。
ま
- みずじめ(水締め)
- 根切り部分に基礎となる石を入れた後、水を浸透させて定着させる工法。
- むかいやま(向山)
- 新島にある山の一つ。かつてはこの山に抗火石の採掘場があったが、今では閉場されている。
- むね(棟)
- 二つの傾斜した屋根面が交差してできる稜線。一般に棟と言えば大棟を指すことが多い。
- めじ(目地)
- 石を積み重ねたり張ったりする際の継ぎ目。コーガ石の場合、時代が古いものは共摺りをして積み上げたため、目地の間隔が狭いが、時代が下るとモルタルを使って積み上げたため、目地の間隔が広い。
- もやい
- 共同で物事を行うこと。
や
- やごう(屋号)
- 家につけられる呼び名。家長の名前やその家の特徴からつけられることが多い。
- やしきがまえ(屋敷構え)
- 建物や庭・敷地境界・道路など屋敷を構成する要素が組み合わされた全体の様子。
- ゆりい
- 囲炉裏のこと。また、囲炉裏を持つ部屋のこと。
ら
- らんじゃく(乱尺)
- 一定の長さに揃っていないこと。
- りゅうもんがん(流紋岩)
- 火山岩の一種。二酸化珪素成分を多く含んだ粘り気の大きい溶岩が、流れながら冷えて固まった鉱物。その流れの跡が縞模様のように残ったことからこの名前がついた。現在では岩石に含まれる二酸化珪素の割合が70%以上のものを指す。
- るにん(流人)
- 流刑に処された人。
わ
- わかごう(若郷)
- 新島村の地名の一つ。新島の北東部に広がる低地部を中心とした地域で、面積は5.32平方キロメートル。人口は約300人。