コーガ石建造物の構法

公開日: 更新日:

コーガ石造の建造物は一般的な木造民家とどのような点が違うのでしょう。そしてどのように建てられているのでしょう。ここではコーガ石建造物の構法について解説します。

二つの構法

建物全体がどのように組み立てられているか、という全体の構造のことを建築では「構法」と言います。もう少し具体的に言うと、建物を構成する空間や意匠をどのように組み合わせるか、といった考え方になります。

よく似た言葉に「工法」がありますが、こちらは具体的な工事の方法や手段を指します。

それではコーガ石造の建物にはどのような構法が使われているのでしょう。それは大きく二つに分けられます。

一つ目は「木造軸組構法」と言い、木材を建物の主要な構造部分に使う構法です。

二つ目は、柱や板壁を使わずにコーガ石を積み上げて作る「せきぞう」と呼ばれる構法です。

この二つの構法はどのような違いや特徴があるのかを見ていきましょう。

木造軸組構法の特徴

木造軸組構法は一般的な木造家屋と同じで、木材で柱や梁を組み合わせて骨組みを作り、その次に柱と柱の間に板壁を張ります。コーガ石建造物ではさらにその外側にコーガ石を張ったり積んだりしたものがこの構法になります。

この「木材で柱や梁といった骨組みを作っていく」構法を「木造軸組構法」、あるいは「在来構法」と呼んでいます。建物の荷重は柱や梁といった軸になる骨組み部分で支えているため、戸や窓といった開口部を比較的自由に作ることができます。この構法ではコーガ石は壁というよりも、むしろ防火機能を持った外壁材といった役割を果たしていると言えます。今の建築資材で言えばサイディングのような感じが近いでしょうか。

「え? 石造と言いながら木造なの?」と思う方もいるのではないでしょうか。しかしこれも石造建築の一つに含まれます。その証拠に、このような木造軸組構法の外側に石積み、あるいは石張りの壁をつけて作られた建物は、木部の骨組みを持っている石造建築という意味で「もっこつせきぞう」という名前がついています。

組積造の特徴

組積造の場合は、土台の上にコーガ石を積み上げていくことで建てていきます。

まず建物を建てる場所に穴を掘り、そこに基礎となる石を埋めていきます。そのあと、石を埋めた場所に水を撒いて浸透させることで砂を固めて土台にします。この作業を「水締め」と言います。新島の地盤は火山の噴火により噴出した石や岩が細かくなったものでできているため、比較的サラサラとした砂のような質感をしています。こうした地盤の場所で土台を作るには水締めが向いているようです。

水締めを繰り返して作った土台の上に、石山から切り出してきたコーガ石を一段ずつ積み上げていきます。こうすることで、積んだコーガ石がそのまま建物の壁になります。

組積造では木造軸組工法とは異なり、建物は壁を構成するコーガ石で支えているため、柱や梁を必要としません。このため建物内部の空間を広くとることができます。反対に、建物を壁で支えているため、開口部を広くすると壁の面積が小さくなり、建物の構造が弱くなってしまうデメリットがあります。

ただし、柱や梁といった木の部材がまったく使われないわけではありません。たとえば室内に見える柱は、扉や引き戸のような間仕切りを設置するために使われます。ほかにも屋根に勾配をつける場合は、下地となる小屋組みを作るために梁や桁に相当する部材が使われることがあります。

積み上げていくときは、コーガ石とコーガ石の間に漆喰を塗って接着しました。時代が下るとセメントが普及していくことから漆喰はしだいに使われなくなり、代わりにモルタルが使われるようになりました。コーガ石は全体に気泡を含んだ状態で冷え固まったため、表面が非常に粗くなっています。この粗い面は漆喰やモルタルとの相性が良く、壁をきれいに積み上げて行くことができたと言います。