屋敷構え

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敷地内における建物の配置の様子を「屋敷構え」と言います。屋敷構えは地域の気候や地形といった風土のによる影響を大きく受けます。ここでは新島の屋敷構えの特徴について紹介します。

屋敷構えとは

屋敷構えとは、敷地の中における建物の配置や、敷地の境界、敷地の周りにある道路や通路など、屋敷を構成する要素が組み合わさった様子を言います。

「屋敷」というと一般には大きな建物、豪邸といったイメージがありますが、建築では建物だけでなく建物が立っている土地、すなわち敷地も含めて考えます。屋敷と言われたら「屋」は家屋(建物)と、「敷」は敷地と考えると分かりやすいと思います。こういうわけで、敷地内に建っている建物が小さくつつましやかでも「屋敷構え」と言います。

敷地の中に建物を配置するには、敷地の形と広さという制約を受けます。また斜面地であるとか雨が多いなど、地形や気候といったその土地の風土からも影響を受けます。

屋敷構えは、こうした制約や風土の影響と上手に折り合いをつけ、より快適に暮らせるように建物を配置した結果と言えるでしょう。

屋敷構えと新島の風土

新島ではどのような屋敷構えになっているのでしょう。新島の場合は冬に「西ん風」と呼ばれる強い西風が吹きます。これにより、新島のほんそん地区では1870(明治3)年に祝部ほおり火事と呼ばれる大火が発生しました。当時はまだ木造茅葺きの家屋が多くあったこともあり、この火事で105軒の家が焼失しました。この後も明治の終わりにかけて三度の大火に見舞われ、そのたびに多くの家を失いました。

このような風と火を避ける工夫として、敷地の西側から北側にかけてコーガ石造りの附属屋や塀を並べて建て、オーヤやインキョを囲いました。このほかの工夫として、本村地区西部の斜面地では敷地を道路面よりも1.5メートルから2メートルほど低く掘り下げることで、風を受けにくくしているところもあります。

屋敷構えは敷地の周りにある道路や通路からも影響を受けます。たとえば道路や通路が西側にあるため、敷地への出入口を西側に設けなければならない場合はどうしたらいいでしょう。このような場合は、直接強い風や火があたらないようにするためにオーヤを出入口の南側、または北側にずらして建てることで建物を守ってきました。

建物の配置を決めることは、一方で建物を建てない場所を決めることでもあります。そうした場所には通路や苗畑、井戸など、暮らしを支えるためのさまざまな施設や設備が配置されました。

本村地区の一般的な民家の敷地は南北10間(約18メートル)、東西15間(約27メートル)、面積150坪(約496平方メートル)が基準とされていました。決められた敷地の中にどのように建物を配置して暮らしやすくするか、ということが家ごとに検討されたことでしょう。

このように屋敷構えには地域性という共通した特徴を持ちながら、家ごとの個性を見ることができます。